Archive for 12月 27th, 2023
[68-Ⅲ🐝🐝🐝]EZ DO DANCE!!
皆さん、こんにちは‼︎ 回転翼航空機も操縦してみたくなっている68-Ⅲの阿部学生です。
宮崎入校前にまた更新すると思っていなかったですよね⁈
更新しない訳ないじゃないですか‼︎ 今回は題名の通りTRFについて紹介したいと思います。
どういうこと⁈と思っている受験生の皆さん、親御さんに聞いてみてください。
…と言うのはウソで、TRFと言えば小室哲哉とサムですよね⁉︎(世代がバレる…)
なので “ルール・オブ・サム” サムの法則(⁈)について話してみたいと思います。航空業界の方ならよく使いますが、日常生活では聞いたことがないのではないでしょうか?
TRFの “SAM”、和を出す “SUM”関数、少しの”SOME”、ダジャレが “寒っ”、ではありませんよ〜
今回のテーマは “THUMB” です。
エアラインではSI単位系(m・kg・sなど)よりも、ft・NM・ktなどの単位を用いることが多いです。さらに同じ “長さ” でも、距離はNM・高さはft・飛行機の長さはin(インチ)を用いるなど単位が混在しています。
“Rules of Thumb” とはパイロットが様々な数値の単位換算(m⇄ftやkm/h⇄ktなど)を暗算で簡単にするために、近似値を出すことができる法則を作ったものです。
操縦中は様々なタスクが重なっていたり、練習機などの与圧されていない小型機では低酸素による判断力の低下などにより、小学生くらいの計算能力になってしまいます。そのため地上ではなんて事のない簡単な計算も間違えたりすることがあります。そのため1ftは0.3048mだから…とは考えてられません。
そこで登場するのが、m→ftなら『3倍して、その結果の1割を加える』、ft→mなら『3倍して10で割り、その結果の1%を加える』という”Rules of Thumb”です。
例えば3000mは実際、約9840ftくらいです。この近似式を用いれば3000×3=9000、1割は900なので、9000+900=9900ftとなり、60ftの差で約0.6%しか誤差がありません。ftからmも非常に誤差が小さいです。
飛行機乗った時に『ただいま高度33000ft、mに換算しますと10000mを順調に飛行しております』という機内放送を聞きますよね。旅客機なら機器ですぐ分かるかもしれませんが、”Rules of Thumb”を知ったあなたは、33000ft×3÷10=9900、1%は99、よって9900+99=9999m と暗算でもできますね‼︎
タイセイ学生、ついて来れてますか〜?
様々な “Rules of Thumb” が航空業界のバイブル「AIM-j」の11章の後半にも載っています。
では次は中級です。実例を用いて色々計算をしてみましょう。
また馴染みのある単位に変換できたら、身近なものに例えてみましょう。よく霞が関ビルや東京タワーに例えますよね?(また世代がバレる…)
もちろん今回の例題は、私たちが使う練習機SR22からの問題です。
まずこの写真をご覧ください。

後部座席から撮っているので画質が悪いですが、操縦中に用いるグラスコクピットの右側のMFDと呼ばれる、エンジン計器などメカニカルな情報が表示される画面(をバックアップモードで操縦に必要な計器も表示させた状態)の写真です。
このようにSR22は最新鋭の機体なので高度や速度、姿勢などの情報がアナログの機器ではなくて、計算されたデータとして1枚の画面に表示されるようになっています。そのため目の移動(クロスチェック)が少なくてラクになった他、計器の針の数値判読に脳の容量を使わなくて良くなっています。
という雑学は置いておいて、本題に参りましょう。
皆さんは航大オタクなので、瞬時にどれがどの情報か分かるとは思いますが、念のために説明しましょう。
まず画面が水色と茶色に分かれてますね。これが空と地面を表しています。そして黄色の山の形(漢字の八)のようなものの頂点が飛行機の姿勢を表しています。またそこに横の線が何本かあって、「10、20」と数値がありますね。これが昇降のpitch角を表しています。今は水色の所にあり、+10°の1/4の線に山の頂点があるので、+2.5°で上昇しています。ですがこの角度の単位(°)はみんな知ってますね… 変換しようがないです。
またその姿勢の表示の下に「065°」とありますが、これは機首が向いている方位を表していて、東北東ですがこれも(°)です…
紫色のダイヤ印(♦︎)が風を考慮した進んでる方向を表していたり、姿勢表示の上では機体の横方向の傾き(Bank角)が分かったり、様々な情報がありますが詳しくは入校してから習いましょう。(現職の皆様、機体が滑っていますが2回目のフライトの時なので許してください…)
では【問題1】
いま飛んでいる高度をmで表してください。
姿勢の表示の右側の縦の表示をみてください。「4480」とありますね。これがいまの高度になります。なお高さなので単位はftです。面倒なので4500ftということにしましょう。
ft→mなら『3倍して10で割り、その結果の1%を加える』でしたね。
4500×3÷10=1350、1%は13.5 1350+13.5=1363.5 大体1365mくらいでしょうか?
333mの東京タワー4つ分の高さですね。3776mの富士山の1/3強です。そう考えると低いでしょうか?
このようにftでは分からなくてもmなら実感がわきますね!
この調子でどんどん行きましょう♪
【問題2】
いま飛んでいる速度をkm/hで表してください。
姿勢の表示の左側の縦の表示をみてください。「147」とありますね。これがいまの速度になります。これはktという単位で1ktなら1時間で1NM(海里)進む速度です。
まず海里ってなんぞや?と困惑してしまいますね 1NMは1852mですが、そんなことを考えていたら目的地を通り過ぎちゃいます…
面倒なので150ktということにしておきましょう。
kt→km/hにはこんなルールがあります。先ほどより複雑ですよ‼︎
『2倍して元の値の15%を引く』
150kt×2=300、150の15%は22.5、300-22.5=277.5 大体280km/hくらいでしょうか?
これは最高時速285km/hの東海道新幹線くらいの速度ですね。エンジン1つの小型機と言えど中々に速いですね。
離陸時でも73kt(135km/h)と在来線特急の最高速度(130km/h)並の速度を出しているんです。それで幅が45mしかない滑走路を滑走するなんて… ママチャリ(最高速度20km/h)の次にSR22を操縦した中の人は、離着陸時に生きた心地がしませんでした…
【問題3】
帯広空港から直線距離でどのくらい離れているかkmで表してください。
これはどこを見たらわかりますかねぇ〜?
まず左上には「109.65 OBE」とありますね。これがDME(Distance Measuring Equipment)という装置に入力した周波数で、これをセットすることでOBE(帯広空港)からの直線距離(正確には上空の機体までの斜距離)がわかります。
下の円の左側に 「DME NAV1 109.65 18.3NM」とあるので18.3NM離れていることがわかります。斜距離なので地図上の距離はもう少し短いですが、18NMとしておきましょう。
このルールは… 残念‼︎ 載っておりません‼︎ ひっかけ問題です‼︎ 1NM=1.852mなので計算してくださーい。
全てが載っている訳じゃないんですよね… ちなみに計算すると33kmくらいです。
東京から千葉くらいまでの直線距離(32km)くらいですね。
【問題4】
エンジンのオイルの温度を℃で表してください。
エンジンオイルの温度ってなに⁈ ネタ切れなの⁈ という声も聞こえますが、静かに解いて下さいね〜
左側の欄に「Oil ℉ 178 」とありますね。これが温度です。いわゆる華氏ですね。
このルールは『32を引いて半分にして、その1割を加える』です。難しすぎるとか言わないでください。
(178-32)÷2=73、1割は7.3なので、73+7.3=80.3 約80℃でしょうか?
コーヒーを淹れるのにちょうど良さそうな温度で、お湯の沸騰の温度より低いんですね〜
ちなみに左側の欄の1番下に「EGT ℉ 1315」とありますが、これが排気のガスの温度で当てはめると、700℃くらいです。
タバコとかの温度くらいでしょうか?ラジウムの融点くらいでもあります。(多分伝わりにくい…)
他にも各速度で、着陸の際に3°の降下角度を保つためにはどのくらいの降下率をすれば良いのか?や、30°のバンクを入れた時にどのくらいの旋回半径になるのか?など様々なものがあります。
皆さん、タイセイ学生、ついて来れましたか〜⁇
結局、東京タワー4つ分の高さを東海道新幹線の速さで飛んでましたね。
先ほどの写真には燃料量やエンジン回転数、風の情報など様々なデータが盛り沢山なので、残りはお正月に自学自習しましょう。
ちなみに今回紹介したMFDはボタンで様々な情報に切り替えられますが、こんな独特なマップにも変えられます。これも勉強してくださいね。(ヒント:低空で飛行する時に非常に重要で便利です)

このように航空業界には様々な興味深いネタが沢山あります。
また紹介できたらと思います。
では、良いお年をお迎えください。

航大のSR22の前のA36ボナンザはアナログ計器だったみたいです。
自衛隊の初等練習機のT-7もアナログ計器です。
ちなみに電子機器が故障した場合の予備計器はアナログ計器ですが、膝元にあるので操縦がかなり大変です…